源氏物語「廃院の怪」原文と現代語訳・解説・問題|世界最古の長編小説

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源氏物語(げんじものがたり)は1008年(寛弘五年)に書かれた長編小説で、作者は紫式部です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる源氏物語の中から「廃院の怪」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「廃院の怪」の解説

源氏物語でも有名な、「廃院の怪」について解説していきます。

源氏物語「廃院の怪」の原文

宵過ぐるほど、すこし寝入り給へるに、御枕上にいとをかしげなる女居て、

「おのがいとめでたしと見奉るをば訪ね思ほさで、かく異なることなき人を率ておはして時めかし給ふこそ、いとめざましくつらけれ。」

とて、この御かたはらの人をかき起さむとすと見給ふ。
物に襲はるる心地して、驚き給へれば、灯も消えにけり。

うたて思さるれば、太刀を引き抜きてうち置き給ひて、右近を起こし給ふ。
これも恐ろしと思ひたるさまにて参り寄れり。

「渡殿なる宿直人起こして、紙燭さして参れと言へ。」

とのたまへば、

「いかでかまからむ、暗うて。」

と言えば、

「あな若々し。」

とうち笑ひ給ひて、手を叩き給へば、山彦の答ふる声いと疎まし。
人え聞きつけで参らぬに、この女君いみじくわななき惑ひて、いかさまにせむと思へり。

汗もしとどになりて、我かの気色なり。

「もの怖ぢをなむわりなくせさせ給ふ本性(*)にて、いかに思さるるにか。」

と右近も聞こゆ。
いとか弱くて、昼も空をのみ見つるものを、いとほしと思して、

「我人を起こさむ。手叩けば山彦の答ふる、いとうるさし。ここに、しばし、近く。」

とて、右近を引き寄せ給ひて、西の妻戸に出でて、戸を押し開け給へれば、渡殿の灯も消えにけり。
風すこしうち吹きたるに、人はすくなくて、候ふかぎり皆寝たり。

この院の預かりの子、睦ましく使ひ給ふ若き男、また上童一人、例の随身ばかりぞありける。
召せば、御答へして起きたれば、

「紙燭さして参れ。随身も弦打ちして絶えず声づくれと仰せよ。人離れたる所に心とけて寝ぬるものか。惟光朝臣の来たりつらむは。」

と問はせ給へば、

「候ひつれど仰せ言もなし、暁に御迎へに参るべき由申してなむ、まかで侍りぬる。」

と聞こゆ。
このかう申す者は、滝口なりければ、弓弦いとつきづきしくうち鳴らして、

「火危ふし。」

と言ふ言ふ、預かりが曹司の方に去ぬなり。
内裏を思しやりて、名対面は過ぎぬらむ、滝口の宿直奏し今こそ、と推しはかり給ふは、まだいたう更けぬにこそは。

源氏物語「廃院の怪」の現代語訳

宵を過ぎるころ、(光源氏が)少しお眠りになっていると、お枕元にたいそう美しい様子の女が座って、

「私が(あなた様を)大変立派だとお慕い申しあげているその私を訪ねようともお思いにならないで、このような格別のとりえもない人(=夕顔)を連れておいでになって御寵愛なさるのが、たいそう不愉快で恨めしく思われます。」

と言って、この(光源氏の)おそばにいる人(=夕顔)を抱き起そうとする、と(夢に)ご覧になる。
(光源氏は)物の怪に襲われたような気持ちがして、はっとお目覚めになると、灯火も消えてしまっていた。

気味悪くお思いになられたので、(魔除けのために)護身用の太刀を引き抜いて(枕もとに)多きになって、右近をお起しになる。
これ(=右近)も恐ろしいと思っている様子でおそば近くに参上した。

(光源氏が)「渡殿の片側にある小部屋にいる宿直人を起こして、紙燭に火をともして参れと言え。」

とおっしゃると、

(右近は)「どうして参れましょうか、暗くて(とても参れません。)」

と言うので、

(光源氏は)「おやまぁ、子どもっぽい。」

とお笑いなさって、手をおたたきになると、こだまの答える音がひどく気味悪い。
(その音を)誰も聞きつけることができず参上しないので、この女君はひどくふるえて、どのようにしようかと思っている。

汗もびっしょりになって、茫然自失し、生気を失った状態である。

「(何かと)怖がることをむやみになさる性質なので、どんなに(恐ろしく)お思いになられていらっしゃるでしょう。」

と右近も申し上げる。
(光源氏も夕顔が)とても弱々しくて、日中も空ばかり見ていたのになぁ、(こんな目にあうなんて)気の毒だとお思いになって、

「私が(行って)人を起こそう。手をたたくとこだまが答える(音が)、とてもうっとうしい。こちらにしばらく、近くに(寄っていなさい)。」

と言って、右近を(夕顔のそばに)引き寄せなさって、西側の妻戸の所に出て、戸を押し開けなさると、渡殿の灯火も消えてしまっていた。
風が少し吹いていて、人は少なくて、お仕えしている者は全部寝ている。

この院の管理人の子で、(光源氏が)親しくお使いになっている若い男と、また殿上童一人と、いつもの随身だけがいた。
(光源氏が)お呼び寄せになると、ご返事して起きたので、

「紙燭に火をともして参れ。随身も弦打ちして絶えず警戒の声をたてよと命じなさい。(こんな)人気のない所で(よく)気を許して寝られたものだ。惟光朝臣が来ていただろうが(どうしたか)。」

とお聞きになると、

「参っておりましたがご命令もない、夜明け前にお迎えに参上しようという旨を申して、退出いたしました。」

と申し上げる。

このこのように申すものは、滝口の武士だったので、弓の弦をたいそう(この場に)ふさわしく打ち鳴らして、

「火の用心。」

と言い言い、管理人の部屋の方へ行くようだ。
(光源氏はこれを聞くにつけても)宮中をお思いやりになって、宿直の殿上人の点呼は終わっているのだろう、宿直の滝口の武士はちょうど今頃(行われているだろう)、と推察なさるのは、まだそれほど夜は更けていないのであろう。

源氏物語「廃院の怪」の単語・語句解説

[をかしげなる女]
美しい様子の女。

[めざましくつらけれ]
不愉快で恨めしい。

[この御かたはらの人]
光源氏のおそばにいる人。夕顔をさす。

[物]
恐れの対象となるもの。

[うたて]
異様に、気味悪く、の意。

[紙燭さして]
紙燭に火をともして。

[若々し]
子どもっぽい、大人げない、の意。

[疎まし]
気味が悪い、不気味だ、の意。

[わななき惑ひて]
ひどくふるえて。

[しとどに]
びっしょりと。

[もの怖ぢ]
恐れること。こわがること。

[いとほし]
気の毒だ、ふびんだ、かわいそうだ、の意。

[睦ましく]
親しく。

*源氏物語「廃院の怪」でテストによく出る問題

○問題:誰の「本性(*)」か。
答え:女君(夕顔)。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は源氏物語でも有名な、「廃院の怪」についてご紹介しました。

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