枕草子(まくらのそうし)は清少納言が1001年(長保3年)頃に書かれた随筆です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる枕草子の中から「御方々、君たち」について詳しく解説していきます。
枕草子「御方々、君たち」の解説
枕草子でも有名な、「御方々、君たち」について解説していきます。
枕草子「御方々、君たち」の原文
御方々、君たち、上人など、御前に人のいと多く侍へば、廂の柱に寄りかかりて、女房と物語などしてゐたるに、ものを投げ給はせたる、開けて見たれば、
「思ふ(*)べしや、いなや。人、第一ならずはいかに。」
と書かせ給へり。
御前にて物語などするついでにも、
「すべて、人に一に思はれずは、何にかはせむ。ただいみじう、なかなかにくまれ、あしうせられてあらむ。二、三にては、死ぬともあらじ。一にてを、あらむ。」
など言へば、
「一乗の法ななり。」
など、人々も笑ふ事のすぢなめり。
筆、紙など給はせたれば、
「九品蓮台の間には、下品といふとも。」
など、書きて参らせたれば、
「むげに思ひくんじにけり。いとわろし。言ひとぢめつる事は、さてこそあらめ。」
と、のたまはす。
「それは、人に従ひてこそ。」
と申せば、
「そがわろきぞかし、第一の人に、また一に思はれむとこそ思はめ。」
と仰せらるる、いとをかし。
枕草子「御方々、君たち」の現代語訳
中宮定子様のお身内の人々や、上流貴族の息子たちや、殿上人など、中宮様の御前に人が多く伺候しているので、(私は)廂の間の柱に寄りかかって、女房と話などをしていたところ、(中宮様が)何かものを投げてお与えくださった、(それを)開けてみたところ、
「愛そうか、どうしようか。人は、第一でないならばどうか。」
とお書きになっていた。
(これは、私が)中宮様の御前で話などをする折にも、
「おしなべて、人に一番に愛されないならば、どうしようか、いや、どうしようもない。(それなら)ただもうひどく、かえって憎まれ、悪く扱われているほうがよい。二番、三番では死ぬとしてもいたくない。一番でいたい。」
などと言うので、
「(それはまるで)法華経の一乗の法であるようだ。」
などと、女房たちも笑う(例の)話の方面であるようだ。
(中宮様が)筆や紙などをくださったので、
(私は)「九品蓮台の間では、下品(の往生だ)というとしても(かまいません)。」
などと、書いて差し上げた所、
(中宮様は)「ひどく弱気になってしまった事ですね。とてもよくない。言い切ったことは、そのまま押し通す方がよいのだ。」
とおっしゃる。
(私は)「それは、相手によって(のことでございましょう)。」
と申し上げると、
(中宮様が)「それがよくないのだよ。第一の人に、また一番に愛されようと思うのがよい。」
とおっしゃるのが、たいそう趣深い。
枕草子「御方々、君たち」の単語・語句解説
第一でないならばどうか。
[あしうせられてあらむ]
悪く扱われているほうがよい。
[一にてをあらむ]
一番でいたい。
[むげに思ひくんじにけり]
ひどく弱気になってしまったことですね。
[そがわろきぞかし]
それがよくないのだよ。
[いとをかし]
たいそう趣深い。
*枕草子「御方々、君たち」でテストによく出る問題
○問題:誰が誰を「思ふ(*)」のか。
答え:中宮が作者を「思ふ」。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は枕草子でも有名な、「御方々、君たち」についてご紹介しました。
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