枕草子「宮に初めて参りたるころ」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の随筆

リンドウ
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枕草子(まくらのそうし)は1001年(長保3年)頃に書かれた随筆で、作者は清少納言です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる枕草子の中から「宮に初めて参りたるころ」について詳しく解説していきます。

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枕草子「宮に初めて参りたるころ」の解説

枕草子でも有名な、「宮に初めて参りたるころ」について解説していきます。

枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文

宮に初めて参りたるころ、ものの恥づかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々参りて、三尺の御几帳の後ろに候ふに、絵など取り出て見せさせ給ふを、手にてもえさし出づまじう、わりなし。

「これは、とあり、かかり。それが、かれが。」

などのたまはす。
高杯に参らせたる大殿油なれば、髪の筋なども、なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど、念じて見などす。

いと冷たきころなれば、さし出でさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたしと、見知らぬ里人心地には、かかる人こそは世におはしましけれと、おどろかるるまでぞ、まもり参らする。

暁には疾く下りなむといそがるる。

「葛城の神もしばし。」

など仰せらるるを、いかでかは筋かひ御覧ぜられむとて、なほ伏したれば、御格子も参らず。
女官ども参りて、

「これ、放たせ給へ。」

など言ふを聞きて、女房の放つを、

「まな。」

と仰せらるれば、笑ひて帰りぬ。
ものなど問はせ給ひ、のたまはするに、久しうなりぬれば、

「下りまほしうなりにたらむ。さらば、はや。夜さりは、とく。」

と仰せらる。
ゐざり隠るるや遅きと、上げちらしたるに、雪降りにけり。

登花殿の御前は、立蔀近くてせばし。
雪いとをかし。

昼つ方、

「今日は、なほ参れ。雪に曇りてあらはにもあるまじ。」

など、たびたび召せば、この局の主も、

「見苦し。さのみやは籠りたらむとする。あへなきまで御前許されたるは、さ思し召すやうこそあらめ。思ふにたがふはにくきものぞ。」

と、ただいそがしに出だし立つれば、あれにもあらぬ。
心地すれど参るぞ、いと苦しき。

火焼屋の上に降り積みたるも、めづらしう、をかし。

枕草子「宮に初めて参りたるころ」の現代語訳

(私が中宮様の)御所に初めて参上した頃は、なんとなく恥ずかしい事が数多くあり、(今にも)涙もこぼれてしまいそうなので、(昼でなく)夜ごとに参上して、三尺の御几帳の後ろにお控え申しあげていると、(中宮様が)絵などを取り出して見せて下さるが、(私は)手さえも差し出す事ができないほどで、(恥ずかしくて)どうしようもない。(中宮様は)

「これ(=この絵)は、ああです、こうです。それが(何々で)、あれが(何々)。」

などとおっしゃる。
上下を逆にした高杯におともし申しあげた灯火であるので、(明るくて)髪の(毛の)筋なども、かえって昼よりもはっきりと見えて恥ずかしいけれど、我慢して見たりする。

たいそう冷える頃なので、(中宮様の)差し出していらっしゃるお手でほんの少し見えるのが、たいそうつやつやと美しい薄紅梅色であるのは、この上もなく素晴らしいと、(宮中の事を)見知らない里人(=私)の気持ちには、このような(すばらしい)人がこの世においでになるのだなぁと、はっとそれと気づかれるほどに、見つめ申し上げる。

夜明け前には早く退出してしまおうと気がせかれる。(中宮様は)

「葛城の神(のようなあなた)もしばらく(お待ちなさい)。」

などとおっしゃるので、どうして(正面から出なく)斜めからでも(私の顔を)ご覧に入れようか、いや、ご覧に入れまいと思って、依然としてうつ伏しているので、御格子もお上げしない。
女官たちが参上して、

「これ(=御格子を)お開けください。」

などと言うのを聞いて、女房が開けるのを、(中宮様が)

「だめです。」

とおっしゃるので、(女官たちは)笑って戻った。
(中宮様が)何かとお尋ねなさり、お話しなさるうちに、時間がかなりたったので、(中宮様は)

「退出したくなっているのでしょう。それならば、早く(下がりなさい)。夜分は、早く(おいでなさい)。」

とおっしゃる。
(御前から)膝行して(姿が)隠れるやいなや、(女房たちが格子を)乱暴に上げたところ、雪が降っていた事だ。

登花殿の前庭は、立蔀が近くて狭い。
(しかし)雪はたいそう風情がある。
昼頃、(中宮様が)

「今日は、やはり(昼間のうちに)参上しなさい。雪で(辺りが)曇ってはっきり見える事もないでしょう。」

などと、たびたびお召しになるので、この局の主人も、

「みっともない。そのようにばかり(局に)籠もっていようとしていられようか(、いや、いられません)。あっけないほど(たやすく)御前(に伺候する事)を許されたのは、そのように(中宮様が)お気に召す理由があるのでしょう。(その)ご好意に背くのは腹立たしいものですよ。」

と(言って)、ひたすらせき立てて出仕させるので、(どうしてよいか)自分が自分でない気持ちがするけれども参上するのは、たいそう辛い事だ。
火焼屋の上に(雪が)降り積もっているのも、珍しく、おもしろい。

枕草子「宮に初めて参りたるころ」の単語・語句解説

[ものの恥づかしき]
なんとなく恥ずかしい。

[見せさせ給ふを]
見せてくださるが。

[わりなし]
どうしようもない。

[参らせたる]
おともし申しあげた。

[念じて]
我慢して。

[はつかに見ゆるが]
ほんの少し見えるのが。

[にほひたる]
つやつやと美しい。

[おどろかるるまでぞ]
はっとそれと気づかれるほどに。

[まもり参らする]
見つめ申し上げる。

[あへなきまで]
あっけないほど。

*枕草子「宮に初めて参りたるころ」でテストによく出る問題

○問題:「下りなむ」とはどう言うことか。
答え:中宮様の御前から、自分の局に戻りたい、ということ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は枕草子でも有名な、「宮に初めて参りたるころ」についてご紹介しました。

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