枕草子「古今の草子を」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の随筆

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清少納言が1001年(長保3年)頃に書いた随筆、枕草子(まくらのそうし)。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる枕草子の中から「古今の草子を」について詳しく解説していきます。

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枕草子「古今の草子を」の解説

枕草子でも有名な、「古今の草子を」について解説していきます。

枕草子「古今の草子を」の原文

古今の草子を御前に置かせ給ひて、歌どもの本を仰せられて、

「これが末、いかに。」

と問はせ給ふに、すべて、夜昼心にかかりておぼゆるもあるが、けぎよう申し出でられぬは、いかなるぞ。宰相の君ぞ十ばかり、それもおぼゆるかは。まいて、五つ、六つなどは、ただおぼえぬよしをぞ啓すべけれど、

「さやは、けにくく、仰せ事を映えなうもてなすべき。」

と、わび、くちをしがるも、をかし。知ると申す人なきをば、やがてみな読み続けて、夾算せさせ給ふを、

「これは、知りたる事ぞかし。などかう、つたなうはあるぞ。」

と言ひ嘆く。
中にも、古今あまた書き写しなどする人は、皆もおぼえぬべきことぞかし。

「村上の御時に、宣耀殿の女御と聞こえけるは、小一條の左大臣殿の御娘におはしけると、たれかは知り奉らざらむ。まだ姫君と聞こえける時、父大臣の教へ聞こえ給ひけることは、

『一つには、御手を習ひ給へ。次には、琴の御琴を、人よりことに弾きまさらむとおぼせ。さては、古今の歌二十巻を皆うかべさせ給ふを、御学問にはせさせ給へ。』

となむ、聞こえ給ひけると、聞こしめし置きて、御物忌なりける日、古今を持て渡らせ給ひて、御几帳を引き隔てさせ給ひければ、女御、例ならずあやしとおぼしけるに、草子を広げさせ給ひて、

『その月、何の折、その人のよみたる歌はいかに。』

と、問ひ聞こえさせ給ふを、かうなりけりと心得給ふもをかしきものの、ひがおぼえをもし、忘れたるところもあらば、いみじかるべき事と、わりなう思し乱れぬべし。
その方(*)におぼめかしからぬ人、二、三人ばかり召し出でて、碁石して数置かせ給ふとて、強ひ聞こえさせ給ひけむほどなど、いかにめでたう、をかしかりけむ。
御前に候ひけむ人さへこそうらやましけれ。
せめて申させ給へば、さかしう、やがて末まではあらねども、すべてつゆたがふ事なかりけり。
いかでなほ少しひがこと見つけてをやまむと、ねたきまでに思しめしけるに、十巻にもなりぬ。

『さらに不用なりけり。』

とて、御草子に夾算さして大殿籠りぬるも、まためでたしかし。
いと久しうありて、起きさせ給へるに、なほ、このこと勝ち負けなくてやませ給はむ、いとわろしとて、下の十巻を、明日にならば、ことをぞ見給ひ合はするとて、今日定めてむと、大殿油参りて、夜更くるまで読ませ給ひける。

されど、つひに負け聞こえさせ給はずなりにけり。

『上、渡らせ給ひて、かかること。』

など、殿に申しに奉られたりければ、いみじうおぼし騒ぎて、御誦経などあまたせさせ給ひて、そなたに向きてなむ、念じ暮らし給ひける。
すきずきしう、あはれなることなり。」

など、語り出でさせ給ふを、上も聞こしめし、めでさせ給ふ。

「我は、三巻、四巻だにえ見果てじ。」

と仰せらる。

「昔は、えせ者なども、みなをかしうこそありけれ。」

「この頃は、かやうなることやは聞こゆる。」

など、御前に候ふ人々、上の女房、こなた許されたるなど参りて、口々言ひ出でなどしたるほどは、まことに、つゆ思ふことなく、めでたくぞおぼゆる。

枕草子「古今の草子を」の現代語訳

『古今和歌集』の本を(中宮様は)ご自分の前にお置きになって、いろいろな和歌の上の句をおっしゃって、

「この下の句は、何。」

とお尋ねになるのに、大体、夜昼、気にかかっていて覚えている歌もあるが、すらすらと申し上げる事ができないのは、どうしたことか。
(才女である)宰相の君でも十首ほど(お答えになるが)、それでも覚えているといえるだろうか(いや、いえないだろう)。

まして、五、六首程度では、もっぱら覚えていないということを申し上げた方が良いのだろうが、

「そのようには、そっけなく、(中宮様の)おっしゃることにはりあいのない返事をする事が出来るでしょうか(いや、できません)。」

と、(女房たちが)困って、悔しがる様子も面白い。
知っていると申し上げる人がない歌を、そのまますべて(下の句まで)読み続けて、(その所に)しおりをおはさみになるのを、

「これは知っているものでしたよ。何故こんなに、できないのでしょう。」

と言って嘆く。
中でも、『古今和歌集』を何度も写本などする人は、全部でも覚えていても当然の事であるよ。

「村上天皇の御代に、宣耀殿の女御と申し上げた方は、小一条の左大臣殿(藤原師尹)の御娘でいらっしゃったと、誰が存じ上げないでしょうか(いえ、誰もが存じ上げています)。
まだ姫君と申した時に、父である左大臣殿がお教え申し上げなさった事は、

『第一には、お習字の稽古をなさい。次には、七弦の琴を人よりもすぐれて弾こうと思いなさい。
それから、古今和歌集の歌二十巻を全て暗記なさいますことを、学問としてなさいませ。』

とお教え申し上げなさったと、(帝は)お聞きになっていたので、御物忌みであった日、古今和歌集をお持ちになって(女御の部屋へ)いらっしゃって、御几帳を(帝と女御の間に置かせて)隔てられたので、女御は、いつもと違っておかしな事だと思った所、(帝は)本をお広げになって、

『その月の、何々の時に、これこれの人がよんだ歌とはどう言う歌か。』

とお尋ね申し上げなさるのを、(古今和歌集を暗記しているかを試そうと)こういうことだったのねとおわかりになられたのも趣のある事であるものの、もし記憶違いをしていたり、忘れている所があれば、大変な事であると、どうしようもなく思い悩んだ事でしょう。
その(和歌の)方面に明るい方を、二、三人ほどお呼び出しなさり、碁石を用いて(正答、誤答の)数を置かせようとされて、無理に(女御に)答えさせようとなさったそうだなど(と聞くと)どんなにか素晴らしく、趣のあった事でしょう。

(その時に女御の)御前に控えていた方までも羨ましい事です。
(帝が女御に)無理に答えさせようとなされると、(女御は)利口ぶって、すぐに下の句まで(答えるということ)はありませんが、全て少しも間違う事はありませんでした。

(帝は)どうにかしてやはり少しは間違いを見つけて終わりにしようと、(女御が間違えないことを)ねたましいとまでお思いになって(続けるうちに)十巻にもなってしまいました。

『まったく無駄であった。』

と(おっしゃって)、御草子にしおりをはさんでお休みになられた事も、また素晴らしい事よね。
だいぶ時がたって、(帝は)お起きになられると、やはりこのことを勝負がつかなくて終わりになさったら、たいへんよろしくないと、後半の十巻を、明日になれば、別の本をも御覧になり参考にする事もあるだろうと(お思いになって)、今日中に(勝負を)決めてしまおうと、灯火をつけて、夜が更けるまでお読みになられました。

けれども、最後まで(女御は)負けなさることはありませんでした。

『帝が、(女御の局に)おでましになられて、このようなこと(をなされた)。』

などと、(女御の父である)殿にお知らせ申し上げたので、(殿は)ひどく心配されて、あちこちの寺に依頼して読経をおさせになって、(宮中の)方角に向かって、(女御が間違えないようにと)祈り続けられました。
風流でしみじみと感じられるものです。」

などと、(中宮様が)お話しになるのを、帝(一条天皇)もお聞きになり、感心なさった。

「私は、(中宮を試そうと思っても)三巻か四巻さえ読み終える事はできないだろう。」

とおっしゃる。

「昔は、身分の低い者なども、皆風流であったのですねえ。」

「近頃は、このような(風流な)事は聞くでしょうか(いや、聞く事はありません)。」

などと、(中宮様の)御前に控える方々や、一条天皇付きの女房で、こちら(中宮の所)へ(出入りを)許されている人たちが参って、口々に言い出したりしている時は、本当に、少しも気がかりな事もなく、素晴らしいと思ったものだ。

枕草子「古今の草子を」の単語・語句解説

[さやは、けにくく]
そのようには、そっけなく。

[これは、知りたることぞかし]
これは知っているものでしたよ。

[書き写しなどする人]
写本をする人。

[聞こえけるは]
申し上げた方は。

[御娘におはしける]
御娘でいらっしゃった。

[いみじかるべきこと]
大変なこと。

[めでさせ給ふ]
感心なさる。

[つゆ思ふことなく]
少しも気がかりな事もなく。

*枕草子「古今の草子を」でテストによく出る問題

○問題:「その方(*)」とは何か。
答え:和歌に関する方面。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は枕草子でも有名な、「古今の草子を」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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