枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」原文と現代語訳・解説・問題|清少納言

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枕草子(まくらのそうし)は1001年(長保3年)頃に書かれた随筆で、作者は清少納言です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる枕草子の中から「この草子、目に見え心に思ふことを」について詳しく解説していきます。

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枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の解説

枕草子でも有名な、「この草子、目に見え心に思ふことを」について解説していきます。

枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文

この草子、目に見え心に思ふことを、人やは見むとする思ひて、つれづれなる里居のほどに、書き集めたるを、あいなう、人のために便なき言ひ過ぐしもしつべき所々もあれば、よう隠しおきたりと思ひしを、心よりほかにこそ漏り出でにけれ。
宮の御前に、内の大臣の奉り給へりけるを、

「これに何を書かまし、上の御前には、『史記』といふ文をなむ書かせ給へる。」

などのたまはせしを、

「枕にこそは侍らめ。」

と申ししかば、

「さは、得てよ。」

とて賜はせたりしを、あやしきを、こよや何やと、つきせず多かる紙を書きつくさむとせしに、いとものおぼえぬことぞ多かるや。
おほかた、これは、世の中にをかしきこと、人のめでたしなど思ふべき、名を選り出でて、歌などをも木・草・鳥・虫をも言ひ出したらばこそ、

「思ふほどよりはわろし、心見えなり。」

とそしられめ、ただ心一つに、おのづから思ふことを、戯れに書きつけたれば、物に立ちまじり、人並々なるべき耳をも聞くべきものかはと思ひしに、

「恥づかしき(*)。」

なむどもぞ、見る人はし給ふなれば、いとあやしうぞあるや。
げにそも理、人の憎むをよしと言ひ、ほむるをも悪しと言ふ人は、心のほどこそ推しはからるれ。
ただ人に見えけむぞねたき。

左中将、まだ伊勢守と聞こえし時、里におはしたりしに、端の方なりし畳をさし出でしものは、この草子乗りて出でにけり。
惑ひ取り入れしかど、やがて持ておはして、いと久しくありてぞ返りたりし。

それよりありきそめたるなめり、とぞ本に。

枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の現代語訳

この草子は、(私の)目に見え心に思う事を、人が見ようとするか(、いや、見ようとはしまい)と思って、何もすることがなく退屈な実家に帰っている間に、書き集めたのが、あいにく、他人にとっては具合の悪い言い過ごしもしたにちがいない所々もあるので、うまく隠しておいたと思ったのに、心ならずも(世間に)塗れ出てしまったことだ。

中宮様に、内大臣が献上なさった(草子の紙)を、(中宮様が私に)

「これに何を書こうかしら、天皇におかれては、『史記』という書物をお書き(写し)になりました。」

などとおっしゃったので、(私が)

「(それは)枕でございましょう。」

と申しあげたところ、

「それでは、(あなたが)取りなさい。」

とおっしゃって(私に)くださったけれども、つまらない事を、あれやこれやと、眠りもなくたくさんの紙を書き尽くそうとしたので、たいそう訳のわからない事が多いことよ。
だいたい、これ(=この草子)は、世の中でおもしろいこと、人が素晴らしいなどときっと思だろう名前を選び出して、(それは)歌などでも木・草・鳥・虫(のこと)をも言い出したとしたならば、(人々から)

「思った程度よりはよくない、心の底が見えすいている。」

と非難されるだろうが、(これは)ただ自分一人の考えだけで、自然に思うことを、冗談で書きつけたので、他の立派な書物と肩を並べて、世間並みであるにちがいないという評判をも聞けるものだろうか(、いや、聞けるものではない)と思っていたのに、

「優れている。」

などと、見る人は批評なさるそうなので、たいそう不思議であることよ。
なるほどそれ(=人が褒めてくれること)も道理で、人が不快に思うことをよいと言い、(また、人が)褒めることをも悪いと言う(私のような)人は、その心の底が自然に(読み手に)推測されることだ。
ただ(この草子が)人に見られただろうことがしゃくにさわる。

左中将が、まだ伊勢守と申しあげた時、(私の)実家においでになられた折に、縁側の方にあった薄緑を差し出したところ、なんとまあこの草子が載って出てしまった。
慌てて取り入れたけれども(間に合わず)、(左中将はそれを)そのまま持っていらっしゃって、たいそう長い間たってから(私の手元に)返ってきた。

それから(この草子は)世間に流布し始めたようである、ともとの本に(書いてある)。

枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の単語・語句解説

[人やは見むとする]
人が見ることはなかろう。

[人のために]
他人にとっては。

[便なき言ひ過ぐし]
具合の悪い言い過ごし。

[心よりほかに]
心ならずも。不本意にも。

[何を書かまし]
何を書こうかしら。

[賜はせたりしを]
くださったけれども。

[ものおぼえぬことぞ多かるや]
訳のわからないことが多いことよ。

[心見えなり]
心の底が見えすいている様子。

[戯れに書きつけたれば]
冗談で書きつけたので。

[見る人はし給ふなれば]
見る人は批評なさるそうなので。

[そも理]
それも道理で。

*枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」でテストによく出る問題

○問題:「恥づかしき(*)」とはどういうことか。
答え:(読み手が気後れするほど)この草子は優れていると批評しているということ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は枕草子でも有名な、「この草子、目に見え心に思ふことを」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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